わからないことに向き合う

わかっていることを箇条書きにする

私は小中学校では、ほとんど

勉強しないまま地域の公立進学

高校に入学できたのは

いいのですが、高2になると

数学の問題を見ても答がパッと

浮かばず授業も理解できず、

仕方なく一夜漬け丸暗記で

定期試験を凌いできました。

 

どこかで引け目を感じつつ

大学に進み、メーカーに就職。

気がつくと学習教室を

主宰していました。

人は「わからなさと」と

直面したときどのように

しているのでしょうか。

 

まずはこの文章題を

ホンヤクするために、

問題から必要な情報だけを

抜き出してみてください。

箇条書きにできると

もっといいですね。

(国立情報学研究所教授 新井紀子

「ハッピーになれる算数」より引用) 

 

 ベイシック・スタディで生徒が

学校の宿題を質問にきたときに

「まずこの問題を読んでわかった

ことを書き出してみて」と言う

だけですが、面白いことに

ほとんどの生徒は「わかった」と

自分で解いてしまいます。

 

多くの場合、わからなくなった

子どもたちは、「自分が何が

わかっていて何がわかって

いないか」が混乱しています。

それらを書き出して整理できれば

後はすっと解答できてしまう

ようなのです。

 

 

わからないままくり返す

 

●すぐに分からないからといって

諦める必要はありません。

コツコツとした努力を

継続しているうちに、

あるときパッと分かるものです。

(放送大学教授 長岡亮介

「本質の演習高校数学」より引用)

 

 

以前、通信教育で学習していた

A君(小2)から二桁のかけ算の

やり方がわからないと電話が

ありました。

 

学習プリント裏面の模範解答を

使ってていねいに説明したの

ですが、腑に落ちない様子。

 

 次に詳細な解答プロセスを

手で書いてそれをファックスで

送って説明したのですが

納得してくれません。

 

最後には「わからなくても

いいから、しばらく裏の答え通り

やってごらん」と提案すると

渋々承諾してくれました。

数日後、A君から「先生、僕

わかったよ」と大きな声で

電話がありました。

「わかる」とは頭で意味を理解する

だけではなく、問題を解く

プロセスの中で起きることを

再確認したのでした。

それは転びながら覚える自転車の

練習に似ています。

 

 

声を出して読む

友人の小学校教師のIさんが、

小学校2年生を担任した際、

かなりの生徒が算数の文章問題に

取り組めない時があったそうです。

 

Iさんは朝の会で一音一音法音読

(教育環境設定コンサルタント 

松永暢史氏開発)を試みていたので、

みんなで問題を一音一音

音読してみました。

すると効果適面。ほとんどの生徒が

問題に取り組めたそうです。

 

 また作家の花村萬月氏は、

幼少時に厳しい父親から

難しい本の音読を強制され、

大人になっても音読していました。

後に文学賞の審査委員となり

大量の候補作品を読みこなす

必要から黙読をするように

なったのですが、それでも

最終候補作品の審査では

かならず音読するとのこと。

 

音読と黙読では理解の深さが

まるで違うらしいのです。

頭で意味を考えるよりも、

音そのものを体で感じることが

深い理解になるのでしょう。

 

 

わからなさと向き合う決心

●最初の頃はレヴィナス

 (フランスの現代思想家)の

語っていることが全くわからない。

よくわからないんだけれども、

レヴィナスは全身の力をふりしぼって

メッセージを送ってきている。

こちらとしては、いくら耳を

傾けても聞こえない。

そんなもどかしさです。

 

その時、僕はレヴィナスのことが

わかる人間に成長しようと決心した。

戦術としてはレヴィナスの思想は

手強いから、レヴィナスが

言及している、

例えばハイデッガーやフッサールに

目を通してみる。外堀が埋まれば、

内堀に辿り着けますよね。

 

そうやってレヴィナスという

謎めいた城を一段ずつ攻略して

いこうという気の長いやり方で

やってきました。

 

例えば結婚して子どもができ、

その後、離婚‥という経験を経て、

初めてわかるようになった部分も

ありますし、武道の稽古の途中に、

気づかされることも多くある。

 

(神戸女学院大学教授 内田樹 

 プチグランパブリッシング「学び」より抜粋引用)

 

 結局、「わからなさ」と向き合う

のに大事なのは、まずは相手が

伝えようとしている姿を想像したり

感じたりすること。

次にそれを「わかろう」と決心する。

 

「わからなさ」に目を背けずに

身を浸し、決してあきらめない

ことのようです。

するとそこから何かが生まれてくる。

内田氏のように外堀を埋めるのも

よし、他の戦術が浮かんでくるかも

しれません。

 

●暗記数学は「思考力・発想力を

鍛えて、数学を得意にする」という

目標を掲げているわけではない。

それは追いつめられた私が

苦しみながら編み出したやり方、

万能ではないが、それでも入試で

合格ラインをぎりぎり突破するには

有効なやり方だ。

(受験技術研究家 和田秀樹

「数学は暗記だ」より引用)

 

 なるほど私が高校でやむなく

行なった丸暗記一夜漬け法も

一つの方法だったのですね。

覚悟を決めてさらに深めていれば